紫外線吸収剤(サンスクリーン剤)の励起状態 地球表面に到達する紫外線は皮膚や眼に対して種々の障害を引き起こすため,太陽紫外線の人体への侵入を抑える方法の確立が緊急に必要とされている。肌を守るための化粧品であるサンスクリーン剤は皮膚上で紫外線を吸収/散乱し,生体への侵入を防ぐ作用をするが,生体への安全性の観点から,吸収された紫外線のエネルギーの行方,すなわち紫外線吸収剤分子の光励起状態から基底状態へ戻る緩和過程を明解にすることが必要である。 |
|
現在世界的に使用されている代表的な有機系UV-AおよびUV-B吸収剤はそれぞれ4-tert-butyl-4'-methoxydibenzoylmethane (BMDBM) およびoctyl methoxycinnamate (OMC)
である。市販のサンスクリーン剤は広い波長範囲をカバーするために,UV-AとUV-B吸収剤の混合系とするのが普通である。このような系ではUV吸収剤間のエネルギー移動が問題となる。BMDBMにはケト体とエノール体の互変異性体が存在し,光照射によりUV-A領域の吸収強度が低下しUV-A吸収剤としての能力が低下する光劣化の問題を抱えている。BMDBMの光安定性はOMC等のUV-B吸収剤が共存すると大きく影響を受けることが報告され,その原因としてUV吸収剤間の三重項エネルギー移動が多くの研究グループにより示唆されているが,三重項エネルギー移動を実験的に示した報告は確認されていなかった。 |
![]() |
![]() |
|
特に,UV-A吸収剤であるアントラニル酸メチル(MA)からUV-B吸収剤であるオクトクリレン(OCR)およびOMCへの三重項エネルギー移動の速度定数を室温溶液中で求め,三重項エネルギー移動は拡散律速過程であることを明らかにした。詳細は次の論文に記載されている。 |
![]() |
|
![]() |
最終更新日:2018年4月23日 菊地研究室トップページへ |